時代を語る史料

内藤陽介『切手百撰 昭和戦後』(平凡社,2011年 4月)を読みました.
内藤氏は切手や郵便物について,さまざまな角度からの考察をおおやけにされていますが,今回の新著は「日本」の「昭和時代」の「戦後」という期間にかぎって,昭和21年から63年までに発行された切手のうちから100点をとりあげて解説しています.切手発行にまつわる裏話や,時代背景,図像にかんする知見などなど,探究・考察の範囲の広さに圧倒されます.内藤氏の努力のおかげで,わたくしたちは切手という「方寸の芸術」にしたしんで,しかも昭和という時代にも向きあうことができました.オールカラーの図版をながめるだけでも楽しいです.なお,全部のページではないのですが,二段組みの本文の下に脚注のようなスペースが設けられており,それぞれの年のおもなできごとを記しています.あのときにはあんなことがあったんだな,と,懐旧の念にかられます.昭和四九年(1974年)の項に「民放テレビ各社、 電力節減のため深夜放送を中止」という記述(p. 110)があるのを発見しました.