2015-01-01から1年間の記事一覧

ことしもっとも印象にのこったもの

美術では永青文庫の「春画展」をあげます.よくも公開してくれた,と,感謝の念がわきおこってくるほどの大胆な企画でした.ただし,展示スペースのためか,あるいはできるだけ多くの作を見せようとのおもわくからか,個々の作品の全体像に接することができ…

希少価値への執念(?)

国立西洋美術館で ≪黄金伝説 古代地中海世界の秘宝≫ を見ました.はるか古代から,ひとびとの「黄金」へのあこがれは相当のものであったらしく,死者への副葬品として用いたり,あるいは権力の誇示としてでしょうか,さまざまな装飾品がつくられてきています…

最近おもしろく読んだ本

宮下規久朗『しぐさで読む美術史』(ちくま文庫,筑摩書房,二〇一五年十二月)読了.宮下氏には,ちくま文庫に『モチーフで読む美術史』とその続編の2冊がすでにありますが,今回は「しぐさ」をとりあげています.「走る」とか「踊る」といった動作,「恥…

つい買ってしまった

地元の書店を覗いて,コミックや新書やエッセイなどの棚をあれこれ見てまわっているうち,雑誌売場にあったムックを3点,面白そうだとおもって,つい買ってしまいました.『別冊宝島 2392 若冲』(宝島社,2015年10月),『別冊宝島 2399 美女の日本史』(…

いろいろなコレクション

4週間ほどもブログの更新を怠ってしまいました.(わずかながらも)本を読んだり,美術館や博物館にいったりしてはいたのですが,その感想を記すのが面倒くさい,というか,あえて取りあげるほどのこともないだろうとおもって,サボリが続くことになりまし…

多彩な収蔵品

学習院大学史料館の企画展 ≪名品続々! 教科書を彩る学習院コレクション≫ を見てきました.史料館開館40周年記念と銘打って,いろいろな収蔵品を展示しています.古代の土器があるかとおもえば,蹴鞠や笏,あるいは近世の百姓一揆のときの文書や,貞明皇后が…

ニワトリと瓢箪

<じつにさまざま>というタイトルを付したくなる企画展を二つハシゴしてきました.まずいったのが文京区教育センターの ≪鶏づくし≫ です.世界各地から集めたニワトリの剥製150羽が一堂に会しているのは壮観というか,ちょっと気味悪いというか,圧倒されま…

たいそうわかりやすい

『芸術新潮 10月号』の特集「ギリシャ神話 エロティック・ガイド」を読みおえました.刊行直後に買ったものの,図版だけをざっと眺めただけでそのままになっていたのを,ツンドク本がたまる一方なのはまずいとおもい,文章による解説部分にも冒頭からいどん…

見応えあり

『別冊宝島 肉筆春画の世界』(宝島社,2015年10月)読了.「大英博物館と永青文庫春画展の出品作も含め90点掲載」と表紙でうたっており,「本邦初公開の秘蔵作品を収録」とも書かれています.タイトルには「肉筆春画」とありますけど,木版によるものも師宣…

かなり混雑

永青文庫の ≪春画展≫ を見てきました.入場制限で待たされることはなかったのですが,会場内はかなり混雑しており,長い列がなかなか進んでくれず,全部を見るのにずいぶん時間がかかりました.<食い入るように見る>という常套句がふさわしいというか,そ…

濃い内容の入門書

車 浮代『春画入門』(文春新書,文藝春秋,2015年 9月)読了.永青文庫での春画展にあわせたのでしょうか,あるいは今年が「錦絵誕生から二百五十年にあた」るので企画されたのか,春画にかんする出版物が目立ちます.本書の著者は「時代小説家、江戸料理研…

ずいぶん変わった「京都論」

井上章一『京都ぎらい』(朝日新書 531,朝日新聞出版,2015年 9月)読了.「まえがき」に「京都を論じた本は、たくさんある。この本も京都論をくりひろげており、テーマの設定に新鮮味があるとは言いにくい。[中略]だが、その書きっぷりに、京都をえがく…

多面的な神さま

渋谷区立松濤美術館で ≪スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり≫ を見ました.スサノヲは「大地を揺るがし草木を枯らす荒ぶる魂と、和歌の始祖としての繊細な美意識を兼ねも」っており「ときとしてスサノヲは天災として顕現しますが、見落としてならない点は…

現代の問題を告発する

清水玲子『秘密 season 0 2,3』(白泉社,2015年 9月)読了.「秘密」にとりかかるにはよほどの覚悟がいるので,発売当日に入手はしたものの,そのままになっていました.きょう,読みはじめ,一気に2冊を読みおえました.すごい,としかいいようがありま…

職人芸のすごさ

武蔵野市立吉祥寺美術館で ≪生誕200年記念 伊豆の長八 幕末・明治の空前絶後の鏝絵師≫ を見ました.長八のなまえを知ったのがいつだったか,はっきりとおぼえていないのですが,メモを繰ったところ,2003年11月にたばこと塩の博物館の企画展「大見世物」で「…

幽霊いろいろ

東京藝術大学大学美術館で ≪うらめしや〜、冥途のみやげ展 全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に≫ を見ました.全生庵所蔵の幽霊画と圓朝にかんする品々を展示する部屋と,それ以外の浮世絵や幽霊画などを集めた部屋との,2部にわけて展示してい…

ひさしぶりに読破

猛暑のあとは台風の影響でしょうか,大雨・大風の不順な天候となって,そのため(と,例によってのいいわけですが)なにもしない日々がずっとつづいていましたけど,3日まえにマンガを4冊買いこみました. TONO・うぐいすみつる『うぐいす姉妹のはらぺこご…

暑いときにはこういうのがイイ(?)

本屋の店頭でたまたま見つけたムックを2冊買いました(買ってしまいました).『TJ MOOK 決定版 日本の妖怪』(宝島社,2015年 9月)と『時空旅人 ベストシリーズ 妖怪と幽霊』(三栄書房,2015年 8月)です.前者はさまざまな妖怪の図鑑といったおもむきで…

こんなのもあり(!)

連日の猛暑でなにもやる気がおきないときには,ちょっと変わったものに触れたほうがいいのではないかとおもい,練馬区立牧野記念庭園記念館の企画展 ≪虫も食べちゃう植物 牧野富太郎もびっくり!≫ にいってきました.食虫植物とは,「湿地や岸壁などの[・・・]…

戦後70年を期して その4

文化学園服飾博物館で ≪衣服が語る戦争≫ を見ました.日清・日露戦争あたりから第二次世界大戦前後まで,戦争というものが服飾にどんな影響をおよぼしたのかを,当時の衣服や写真や雑誌など,さまざまな資料によって検証しています.着物の柄に戦争関連の意…

戦後70年を期して その3

石神井公園ふるさと文化館で ≪戦時下のくらし≫ を見てきました.国民服や防空頭巾や出征兵士のための日の丸の寄せ書きなど,これまでに他の博物館で見たのと同じようなものもありましたが,今回の企画展では学童疎開にかんする資料が多いのが特色です(と,…

パロディー化のおもしろさ

遠藤淑子『なごみクラブ 6』(竹書房,2015年 7月)を読みました.「第57話」のつぎに置かれている「リバーシブル」は描き下ろしなのでしょうか.それぞれの冒頭の1ページ目とラストの1コマは,絵もセリフもほとんど同じですし,ほかにも同じセリフがあち…

戦後70年を期して その2

杉並区立郷土博物館分館で ≪戦争を語り継ぐ≫ を見ました.「杉並区戦後70年事業」として,「分館企画展」と「区民参加型展示」の2部門にわけて展示をおこなっています.分館の企画としては,戦時中の杉並区の様子を地図や年表や写真,当時の道具類(灯火管…

今どきにふさわしい本(?)

流水りんこ『アナタもワタシも知らない世界 オカルト万華鏡 4』(朝日新聞出版,2015年 7月)読了.このところのうっとうしい気候と政治状況のせいで(と,責任転嫁してますけど),なにもやる気がおきず,本を手にとっても途中で投げだしてしまうことがおお…

戦後70年を期して

東大和市立郷土博物館で ≪戦後70年企画展示 私たちのまちは戦場だった≫ を見ました.かなりショッキングなタイトルですが,じっさい,多摩地区には多くの軍需工場や軍関連の施設があったのだそうです.(今回,はじめて知りました).そのひとつとして,「昭…

これからも続けてほしい企画

中野区立歴史民俗資料館で,本日が最終日の企画展 ≪ポスターに見る戦中生活 須藤亮作コレクション≫ を見てきました.須藤氏は中野区江古田に住んでおられた郷土史家で,1,500枚以上のポスターコレクションを20年ほど前に当館に寄贈されたのだそうです.その…

子どもをあつかった展示

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館で ≪子どもと遊び≫ を見ました.明日が最終日というギリギリのところだったんですが,やはりいってよかったです.「子どもと遊び」というタイトルのもとに,日本各地の郷土玩具,子どもの着物,子どもの風俗を描いた浮世…

学習マンガ(?)

蛇蔵『決してマネしないでください。2』(講談社,2015年 6月)を読みました.既刊の『1』を読んだときにもおもったのですが,なんともヘンな作品です.オビに「楽しく知的な、大人の学習マンガ!!」とあるのですけど,ふつう「学習マンガ」というと,知識や…

こんなに色々あるとは知らなかった

埼玉県幸手市の権現堂公園にいって「第15回あじさいまつり」を見てきました.この公園は春の桜をはじめ,1年中さまざまな花をたのしむことができるところなのだそうですが,わたくしがいったのははじめてです.あじさいというものが,ずいぶん多様であるこ…

着物の線が色っぽい

回向院念仏堂でおこなわれた ≪二日間だけの鳥居清長展≫ を見てきました.ことしが清長の没後200年にあたるとのことで,「清長と縁の深い」回向院での展示が企画されたのだそうです.大判の作もあれば,縦に細長い柱絵もあり,美人画や役者絵や,金太郎を描い…