「西洋」を受容することのあれこれ

文化学園服飾博物館で ≪日本人と洋服の150年≫ を見ました.タイトルには「150年」と謳っていますけど,じつはそれ以前,16世紀なかばごろの鉄砲伝来にはじまる西洋の文物の受けいれから,現代までをたどっています.羅紗や更紗といった,それまでの日本にはなかった布地を陣羽織につかってみたり,煙草入れを作ったりしています.素材だけでなく,西洋の洋服(の構造)にも興味をいだいて,筒袖やズボンのような形態を和服に採りこむことが江戸時代後半あたりにおこなわれたりもしたらしいのです.やがて,明治になると欧化主義を押しすすめて天皇や皇族,明治政府の高官や軍人たちの洋服着用がはじまります.が,洋服が一般化するのにはさらに時間がかかったようです.外では洋服を着用しても,家庭に帰れば和服に着替える,というのが一般的だったとか.また,女性のほうが洋装化の進行がおくれたらしく,都会と地方との差もあります.昭和前期の戦中・戦後の物資不足のときには着物地を洋服に仕立て直すこともあり,そういった資料類もいろいろと展示してあって,むかしの時代相のあれこれをしのぶことができます.昭和40年代になるとミニスカートがはやり,日本人デザイナーもパリ・コレに出品するなど,現代に通じる形態があらわれてきますけど,そうした「西洋化」のなかにも日本風の要素が込められることがある,というのがおもしろいところです.