装飾への意欲と謙虚さ

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館の特別展 ≪縞と格子≫ を見ました.武士や金持ち商人などの上層階級ならば着物に豪華な吉祥文様や花鳥図を描いたり織り出したりさせたでしょうが,ビンポーニンにはそんなことはおよびもつきません.それでも,無地では飽きたらないのか,色ちがいの糸を織り込めば縞模様の布ができますし,経糸緯糸の双方に色ちがいの糸を用いれば格子模様になるわけです.そうした布でつくった着物や夜具や布の断片やら数十点を展示しています.それも手織りで,屑糸織布によるものもあります.「屑糸織布」とは織物をつくるときに出た糸の余り(つまりクズ)を捨てずに縒り合せて糸にしなおして用いた,まったくの廃物利用です.そのため,布の表面にダマのような盛り上がりがあったりして,野暮ったいようにも見えるのですけど,かえって素朴なおもむきがあるように感じられます.むかしのひとの装飾へのおもいと(物を無駄にしない)謙虚さには,感服させられます.