子をおもう気持ちのあらわれ

京橋の LIXIL ギャラリーで ≪背守り 子どもの魔よけ展≫ を見ました.背守りというものがあったことは波津彬子氏の「背守りの犬」(「雨柳堂夢咄」第三十九話)で知りましたけど,じっさいに見るのははじめてです.昭和初期くらいまでにおこなわれていたとのことですので,いまでは知るひとのほうがすくないかもしれません.着物の背(の襟の下あたり)に糸をいく針か通したもの,立体アップリケである押絵を縫いつけたもの,刺繍をほどこしたものなど,形態や意匠はいろいろですが,子どもの成長をねがい,<魔> が忍び入るのを防ごうとする親のおもいは共通しているようです.ほかに,「百徳」と称される着物があったことを,はじめて知りました.長寿の方などから端切れをもらい,それを縫いあわせて着物に仕立てあげたのだそうです.現代からは想像もできないことですけど,むかしのひとはモノを大切にし,ムダを出さない工夫をしていたんですね.この企画展は,とくに派手なものとかすぐれて美的なものがあるというわけではないのですが,過去の日本の習俗や,むかしのひとたちの感性をうかがわせてくれる点で,貴重です.なんだかほっとした気持ちになります.現代のきなくさい,イヤな政治状況を息苦しく感じている方々へもおすすめの展示といえます.