おもちゃの持つ意味

中野区立歴史民俗資料館で ≪特別展 おもちゃ絵とすごろく≫ を見ました.「おもちゃ絵」とは「江戸時代から明治前期にはやった子ども向けの多色刷り木版画」で,さまざまな分野の <モノ> を網羅して示したり,切り抜いて遊ぶこともできたりするような,娯楽的・啓蒙的な玩具(?)であったようです.国芳の弟子の芳藤はこうしたおもちゃ絵を数多く手がけて,「おもちゃ絵のよし藤」と呼ばれたとか.そういえば,国芳にも偏執狂的といいたくなるような <モノの氾濫> を示す作品がありました.「○○づくし」と称される絵には,現代の図鑑に相当する意味(機能)もあったようです.いっぽう,「すごろく」には「盤双六」と「絵双六」の二種があり,「盤双六」は西洋のバックギャモンとおなじあそびです.(「玉藻前曦袂」で桂姫と初花姫がしているのも,このバックギャモンです).なお,解説のプリントに「12個のマス目」とあるのは,「24個のマス目」とすべきでしょう.「絵双六」にも二とおり(「飛び双六」と「廻り双六」)があって,サイコロの出た目の数によって「どこそこの目に飛ぶ」という指定のあるものと,目の数だけを移動させるものとがあります.驚かされるのは,これらの双六がいろいろな分野を取りいれていることです.役者双六とか名所双六はともかく,明治時代に教育双六というのが出ているというのは,当時の「理念」が反映されているのでしょうか.ともあれ,こうした資料によって過去のありさまを知ることができるのは,たいそうありがたいことです.