2.26に関連して

三島由紀夫の短編集『花ざかりの森・憂国』(新潮文庫)を本棚からひっぱりだして,「憂国」だけを読んでみました.著者による「解説」に,「『憂国』は、物語自体は単なる二・二六事件外伝であるが、ここに描かれた愛と死の光景、エロスと大義との完全な融合と相乗作用は、私がこの人生に期待する唯一の至福であると云ってよい。しかし、悲しいことに、このような至福は、ついに書物の紙の上にしか実現されえないのかもしれず、それならそれで、私は小説家として、「憂国」一編を書きえたことを以て、満足すべきかもしれない」と,あります.1970年秋,市ヶ谷自衛隊駐屯地のバルコニーにおいて,三島はこの「至福」を体感したのでしょうか.