ことしもっとも印象にのこったもの

ブログの更新をおこたったまま,大晦日をむかえてしまいました.例によっての「ことしもっとも印象にのこったもの」を記して,一年のしめくくりとします.
芝居では十二月文楽公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」.劇場へ足をはこんだのは一度だけですので,これを挙げるほかありません.ブログにちょっと書いたように,ながいあいだに積みかさねられてきたさまざまな創意工夫を認めることができ,堪能しました.ただし,「忠臣蔵」には演劇的な要素が多く,語り物としての浄瑠璃というより,歌舞伎の代表作と呼ぶべきなのかもしれません.
美術では,個性的なものを見た,というのがことしの全般的な感想です.サントリー美術館の ≪宮川香山≫ とか国立西洋美術館の ≪メッケナムとドイツ初期銅版画≫ とか損保ジャパン日本興亜美術館の ≪カリエール展≫ とか.が,あえてひとつ挙げるならば国立西洋美術館の ≪クラーナハ展≫ になるでしょう.「西洋美術」というものを味わわせてくれた,と,おもっています.
漫画ではとり・みき『メカ豆腐の復讐』(イースト・プレス,2016年10月)を推します.ブログではとりあげていませんが,どう評すればいいのかわからなかったからです.というより,これを読んだ感想や印象を文章化することができなかった,というのが正直なところです.この事情はじつは今でも変わっていません.なんとも変な作品集で,SFあり,パロディーあり,エッセイ漫画ありで,いわくいいがたい,としかいいようがありません.なかで,巻末に置かれている「Mighty TOPIO」がすごいです.3・11の震災に触発されて成ったものですが,この事件をどうとらえるかとか,どのような教訓をよみとるべきなのか,といった意味づけそのものを無効化するかのような,それでいて,人間の営為に対する尊厳をあらわしてもいます.(と,わたくしにはおもわれました).