執念 ?

牧野記念庭園記念館で ≪牧野式植物図への道 I −種の全体像を描くために−≫ を見てきました.記念館の常設展示室にも富太郎の描いた植物図が何点か展示されていますけれど,そちらは牧野の植物図の特色を解説することにウェイトが置かれている(らしい)のに対し,今回の企画展では年代順の展示がなされています.十代後半で江戸の植物図譜を筆写し,自分でも植物を写生した図(和紙に筆で描いたもの)を残していますけど,初期の絵は平面的なものが多いようです.二十代になると,西洋の植物図に接してその影響を受けたためでしょうか,陰影をつけた精密な描写が見られるようになり,さらに歳月をへると,植物学研究の進展とあいまって,絵による研究論文とでもいいたくなるような図があらわれてきます.ある植物の全体図を中心に置き,花弁や葉や種子などの部分図を配して解説を付し,<種の全体像>を示す「牧野式植物図」と呼ばれるものです.これをつくりだすためには,ひとつの植物をいろいろな角度から描いたり,咲き始めから満開の時までなど時間的な差をもうけて描いたりもしているようです.それにしても驚かされるのは描写の緻密さです.よくもこれほど入念に描きこんだものです.植物に対する執念と呼びたくなるほどです.