悲惨な体験をユーモラス(?)に描く

九段生涯学習館2階の九段ギャラリーで ≪マンガで描いた抑留・引揚げのガマン≫ を見てきました.昭和20年 8月,日本の敗戦の直前,満州などにいた日本人に大変な事態が到来します.「軍人・軍属を中心とした約57万5千人が、シベリアを始めとする旧ソ連やモンゴルなどに抑留され、酷寒の地で乏しい食糧と劣悪な生活環境の中、苛酷な労働に従事させられ」た、というのです.また,「民間人である女性や子ども、老人は [中略] ほとんど着の身着のままで、日本への船が出る港まで移動しなくてはなりませんでした」とのこと.こうした状況を絵で示したのが,今回の展示です.なんともすさまじい光景が描かれていますが,しかし,ここから受ける印象は,悲惨というだけではありません.「ユーモラス」ということばを使っていいものか,疑問はあるのですけど,個々の情景には「ぬくもり」とでもいうようなものがあるように,感じられました.上田トシコ氏が描いた,日本人の時計をいくつも取りあげて腕にまいているロシア兵の姿などには,そうしたおもむきがあるといえるのではないでしょうか.