語り伝えるということ

年長のひと(両親とか祖父母など)からむかしの話を聞いた,という体験はたいていのひとがしているでしょう.しかし,「むかしの話」はかならずしも口承によってなされるとは限りません.文章に書きのこす,という方法もあれば,絵に描いて伝える,ということもあります.写真という手段もありますけど,写真にはリアルという性質が濃厚なので,個人的な体験は肉筆による絵のほうに(そのひとの思いが)より強くあらわれるのではないでしょうか.まして,カメラがさほど普及していなかったり,カメラを持つということが不可能であった事態のときは,なおさらです.さて,こんなことを書いたのは,平和祈念展示資料館で ≪漫画でたどる引揚げ展≫ を見てきたからです.「11人のマンガ家が子どもの頃にみた戦争と自身の引揚げを描いた作品を紹介」しています.チラシに「幼き日の記憶をたどる漫画には、戦争も引揚げも知らない子どもと大人に、自分たちの体験を伝えたいという想いが込められています」とあり,描かれているのは風景もあれば人物もあり,じつにさまざまです.赤塚不二夫氏とちばてつや氏,森田拳次氏が真っ赤な夕陽の光景を描いているのが,とくに印象にのこりました.