原発

山岸凉子「パエトーン」を再読しました.
山岸氏は神話・伝説に取材した作品をかず多く創作されていますので,これもそういうマンガかとおもってしまうのですけど,パエトーンの物語は冒頭から(タイトルページもふくんで)8ページでおわり,そのあと,山岸氏の自画像キャラによる原発についてのはなしが32ページにわたって続きます.原子力発電の原理や,チェルノブイリ発電所の事故,日本の原子力発電所の状態などなど,じつにくわしく解説されています.理路の明解さと,説得力にみちた主張には,讃嘆するほかありません.ごく一部だけを引用しておきます.

太陽は今も核融合しています/地球はその太陽の恩恵をこうむっているのです

しかし核融合は太陽の規模でこそ初めて可能なのであり 地球上で行なうべきものではないのです

太陽に匹敵するエネルギーを手に入れようなどそれこそパエトーンと同じ愚かな事なのです

山岸凉子スペシャルセレクションVI 夏の寓話』(潮出版社,2010年 5月),p. 352
なお,「パエトーン」は『パエトーン』(あすかコミックス,角川書店,昭和63年 6月)と『ブルー・ロージス』(文春文庫,文藝春秋,1999年11月)にも収録されています.ひとりでもおおくの方にこの作品を読んでほしいものです.