久しぶりに美術鑑賞

三菱一号館美術館で <マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン 華麗なる宮廷を描いた女性画家たち》を見ました.
地震いらい,なんとなく気が抜けて,本を読んだりしてもあまり身が入らなかったんですが,こういうときこそ現実をはなれて美の世界にあそぶのがいいんじゃないかとかんがえ,いってきました.ヴィジェ・ルブランというのは,マリー=アントワネットをはじめとする貴婦人たちを相当に美化して甘ったるく描く画家だという印象があったのですけど,じっさいに作品をまとめて見たら,たしかに甘いところはあるものの,なかなかの技量をもつひとだと,見直しました.ことに光と影の使いかた(描きかた)がうまいんですね.そのもっともいい例が「クリュソル男爵夫人、 アンヌ=マリー・ジョゼフィーヌ・ガブリエル・ベルナール」(cat.no. 63)でしょう.こちらをふりむいた顔にハイライトが当てられ,見るものの目をひきつけずにはおきません.手にした楽譜の右端部分だけがあかるく,のこりは陰になっているのもすぐれた処置です.だいたんな赤と黒の色取りによる服と帽子が強烈です.ほかの絵でも,衣装(絹やレースなど)の質感描写がみごとです.
ヴィジェ・ルブラン以外の女性たちの作品もいろいろと展示されていました.女性の手に成るものという先入観のせいか,どの絵もやさしい顔つきに見えます.が,それらとは一線を画す個性的な作として,わたくしはマリー=アンヌ・コローの彫刻作品(cat. nos. 29-32)と,フランス王妃、 マリー・レクジンスカによる「ヴェルサイユ宮殿、 中国風居室の彩色パネル」(cat. nos. 2-9)とをおもしろく見ました.