オランダ・フランドル絵画の多様性

Bunkamura ザ・ミュージアムで《シュテーデル美術館所蔵 フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展》を見ました.全95点のうち90点は日本初公開だそうです.歴史画や肖像画や,静物画,風景画などいろいろありました.17世紀のオランダ・フランドル絵画の多様性とその生産量とには,まったくおどろかされます.これまでにもいくつかの美術展でこうしたジャンルの作品を目にしてきました.美術史の先生方はそれらの特色や様式や時代背景などを解説しなくてはいけないんでしょうが,わたくしなどはそんなことはおかまいなしに,好き勝手な評価をブログでおおやけにすることができます.シロートの特権ですね.そんなわけで,気に入ったものをあげておきます.
○ フェルメール「地理学者」(cat. no. 1)
今回のメダマです.完璧といっていいくらいのできばえです.ただし,図録の写真にくらべて,現物はもっと暗いという印象をうけました.
○ ルーラント・サーフェレイ「音楽で動物を魅了するオルフェウス」(cat. no. 4)
オルフェウスよりも,動物たちのほうが主役といっていい作品です.2004年 4月に東京都美術館の《栄光のオランダ・フランドル絵画展》で見た同主題の作品(本作より十数年後)はこの傾向をさらにおしすすめていて,オルフェウスがどこにいるのか,見出すのがむずかしいほどです.
○ バルトロメウス・ブレーンベルフ「聖ラウレンティウスの殉教」(cat. no. 10)
凄惨でグロいシーンなんですけど,この絵を見るひとたちは,ひょっとして見世物のように楽しんでいたんじゃないでしょうか(笑).
○ ヘリット・ダウ「夕食の食卓を片づける女性」(cat. no. 40)
かなり暗い,小品といっていい大きさの作ですけど,これはすごいです.ろうそくとランタンを光源とする描写には,ジョルジュ・ド・ラ・トゥールに通ずるものがあるとすら,おもってしまいます.
○ ハルメン・ルーディング「苺の入った中国製の陶器とレーマーグラスのある静物」(cat. no. 90)
静物画はどれもいいんですが,本作はとくにものの質感をあざやかに伝えているとおもいます.