年齢のせい(?)

赤瀬川原平『健康半分』(デコ,二〇一一年七月)を読みました.「病院の待合室に置く小冊子『からころ』に「病気の窓」というタイトルで連載していたもの」だそうです.巻末の注記によれば初出は「二〇〇六年二月〜二〇一一年六月」とのことですが,全部で23項目しかないので,断続的な掲載だったのでしょうか.わかいときにはあまり気にかけない「健康」とか「病気」について,坦々と語っています.巻頭の「病気旅行に出かける」と題する文章のはじめに「病気はチャンスだと思う。成りたくて成る人は一人もいない。でも時と場合によっては成ってしまう。自分から成れないものに成ったのだから、 これはチャンスだと思うようにしている」(p. 6)とあるように,一歩しりぞいた,斜にかまえたような角度からの考察がくりひろげられます.どの節もじつにおもしろく,ことに比喩のたくみさには感心させられますが,かつての「トマソン」などへのこだわりにくらべると好奇心のつよさがやや減じているようにおもわれるのは,(失礼ながら標題に記したように),古希をすぎた著者の年齢によるのでしょうか.ただし,よけいな修飾をそぎおとした文体には掬すべき滋味がそなわっており,日本語の模範的な文章といえるだけの風格があるかと,おもわれます.