読んだ本

加賀野井秀一『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』(白水社,二〇一二年一月)を読みました.お正月そうそうにこんな本をとりあげるなんて,どうかとはおもったんですけど,ことしになって読んだもののうちもっともインパクトがあっておもしろかったので,紹介することにしました.内容は,タイトルから推して知るべく,わたくしがくどくどと記すまでもないでしょう.西洋にはよくもまあ,こういった「博物館」があるものだと(なかば)あきれてしまいます.というより,こうしたモノに執着したひとびとがいたということに,おどろかされます.著者である加賀野井氏の関心も,個々の猟奇的な「モノ」より,それをつくったひとにむかっているようで,ことに後半ではそうした面への探求がなされています.人体の乾燥標本をつくったオノレ・フラゴナールなる人物がいたなんて,はじめて知りました.「ブランコ」で有名なロココ画家のジャン=オノレ・フラゴナールの従弟だそうです.ほかにも,人骨をもちいたシャンデリアや装飾に意を凝らしたひととか,内臓もあらわな人体模型をつくった蝋細工師とか,あやしげなヒトとモノたちがいっぱい出てきて,楽しめます(笑).