味のある顔

たばこと塩の博物館で ≪紫煙と文士たち 林忠彦写真展≫ を見ました.戦後の「文士」たち59名の写真を展示しています.ポスターや図録の表紙を飾っている太宰治のスナップや,ゴミの中にいるような坂口安吾が有名ですが,ほかにもいろいろな写真があって,たのしめます.このひとはこんな顔をしていたの,と,おどろかされるようなものもあり,(わたくしが知らなかっただけかもしれませんけど)岸田国士の「軍人だったら、まちがいなく将官級の顔」や,坪田譲治の「田舎の村のおじさん的なムード」がある風貌が,印象にのこりました.どのひとも,それぞれ独自の味のある顔をしていますね.『文士の時代』から抜粋したコメントも,ひとりびとりの作家や撮影時のエピソードを語っていて,興味深く読むことができます.今回の企画展は,昭和という時代の(戦後の)一面を記録した貴重なものといえるでしょう.
午後2時からは,視聴覚ホールで関連講座「渋谷戦後物語」を聞きました.講師は当館主席学芸員岩崎均史氏です.「武蔵國 谷盛荘」と称せられていた中世のころから,江戸時代のありさま(神社や街道など)を概観したあと,渋谷地区の戦後の写真を数多く示し,現在の写真とも照合して,比較検討しています.昭和20〜30年代の渋谷とはこういうところだったのか,と,(なかばノスタルジーにかられつつ)映し出された映像を堪能しました.