比喩の使いかたがおもしろい

赤瀬川原平『「墓活」論』(PHP研究所,2012年 3月)を読みました.「墓活」とは「就活」とか「婚活」といったことばから連想して赤瀬川氏がつくった造語だそうで,「墓の活動である」(p. 12)と書かれていますが,しかし墓が活動するわけではなく,墓や寺とのかかわりについての,(そうした関係をかんがえたり実行したりする)人間の活動です.わかいときにはだれしもお墓なんかには関心をもたないでしょうけど,年取ってくると死後のありようが気になるようで,墓とのつきあい方に変化が出てくるらしいのです.赤瀬川氏も先祖伝来の墓を移した経験をもち,この本のなかで語られています.それ以外にも,著名人(や関心のあるひと)の墓に詣でるとか,ペットの死にさいしての処置とか,寺や墓とのかかわりをあれこれと記しています.が,赤瀬川氏がユニークなのは,発想が自由であることで,たとえば次の記述があります.

人間に限らず、犬も猫も老化する。/生き物に限らず、カメラも時計も、大事な蔵書も、いずれは老化する。/そこでも同じ問題が顔を出す。/それらのお墓はどうするのか。(p. 3)

ほんとうに,どうするんでしょうね.「モノ」の行く末(=墓)というのは,わかったようでいて,あんがい不確実なようです.