むかしの気配を伝えてくれる

東京都写真美術館で ≪フェリーチェ・ベアトの東洋≫ を見ました.ベアトの作品は,横浜開港資料館が所蔵する写真をまとめた本()を見たことがありますが,今回の展示はJ・ポール・ゲティ美術館のコレクションで,日本だけでなく,インドや中国やビルマなどの光景も伝えています.19世紀なかばから世紀末までの世相のあれこれが写しだされており,歴史資料としても貴重なものといえるでしょう.死体やシャレコウベを写しているのが,すごいですね.ヤラセらしいところもありますけど,これは当時の技術からすれば,やむをえないでしょう.露光に数秒かかったらしいのですから,今日のスナップショットのような自然な光景を切りとることができなかったのは当然で,撮影されるひとびとも構えた姿勢になるのは,避けられないでしょう.が,そうした事情をさしひいても,ベアトの写真には,その時代の雰囲気が感じられ,それが彼の作品の魅力になっているのではないかと,おもわれます.
)横浜開港資料館(編)『F.ベアト写真集 1,2』(明石書店,2006年 4月,7月)