明治初期の文物あれこれのおもしろさ

GAS MUSEUM ガス資料館で ≪開業140周年記念 レールが繋ぐ開化の架け橋 「明治鉄道錦絵」展≫ を見ました.「140周年」と銘打っているのは,「1872年(明治5)という年」が東京横浜間の鉄道開業の年であるためで,「未知の乗りものであった鉄道は、開業前よりさまざまな絵師たちにより想像で錦絵に描かれ、開業後は走る汽車の姿を始め、その様子を眺める人々の姿や駅舎の様子も数多くの錦絵に描かれ、全国各地の人々に伝えられました」とチラシに説明があり,そうした鉄道錦絵30数点を展示しています.超絶技巧をきわめた江戸の錦絵とくらべたなら,どぎつい赤色が目立つ明治のものが見劣りするのは当然ですけど,しかし,それらを単純に「稚拙」とするのではなく,明治という「文明開化」の時代にあらたな対象を「錦絵」に収めようとした当時の人々の意識と努力とがあらわれている,と見るべきなのではないだろうかと,かんがえてしまいました.明治の絵師たちは遠近法など西洋の技法を積極的に取りいれているんですね.そのいっぽう,江戸時代の様式も残しており,内容と技法とのアンバランスというか,たくみな折衷というか,ヘンな印象をもたらすところに,明治初期の錦絵のおもしろさがあるようにおもいます.たとえば汽車の車両なんかは奥行き(幅)が感じられず,芝居の書き割りみたいです.また,先の引用にもあるように,「人々の姿」がどの作品にも(かならずといっていいほどに)さりげなく描かれているのも,特色といえるかと,おもわれます.