日本のかたすみでの信仰のかたち

京橋のLIXILギャラリー(旧・INAXギャラリー)で ≪鉄川与助の教会建築 五島列島を訪ねて≫ を見ました.「鉄川与助」というのははじめて聞く名だとおもったのですが,念のため『別冊 太陽 日本のこころ 119 日本の教会をたずねて』(平凡社,2002年10月)にあたったところ,与助の設計した教会のいくつかが写真とともに紹介されていて,「鉄川与助の生涯とその仕事」と題する記事もありました.この本はひととおり目をとおしたはずなのですけど,人間の記憶なんて当てにならないものですね(もっとも,わたくしの記憶力がとくにオソマツなだけかもしれませんが).さて,今回の企画展では白石ちえこ氏撮影の写真を展示しています.五島列島を中心とした8つの教会を取りあげて,それぞれの外観や内部,リブ・ヴォールト組みの天井やステンドグラスなど,カトリック教会の様式のあれこれをつたえてくれています.レンガ積みの外壁には,木と土の日本家屋とは比べものにならぬ頑強さと重量感があるのですけど,しかし,ヨーロッパの聖堂建築とはどこかちがった雰囲気があるようです.規模がさほどおおきくはないのが原因かもしれません.そして装飾にも,慎ましさというか,やさしさというか,素朴なおもむきがあるように,わたくしは感じました.No. 6の「江上天主堂」は木造で,そこにほどこされたガラス絵は信徒たちがみずから描いたものだそうです.こうした<モノ>をつくりあげたひとびとの「信仰心」(と,とりあえずいっておきます)には,賢しらな判断や評価を拒絶するようなところがあって,わたくしもことばを失います.ヘタに紹介したり論じたりするよりも,じっさいにその<場>にいって,そこに身をおいてみたくなります.