多才で多彩で多面的

日本橋三越のギャラリーで ≪生誕100周年記念 中原淳一展≫ を見てきました.中原淳一といえば,挿絵画家でありファッションデザイナーだと(ばくぜんと)おもっていたのですけど,それだけでない,じつに多面的な活動をしたひとなんですね.戦前の『少女の友』のややうれいをおびた顔つきには耽美的・頽廃的なおもむきがあって,軍部が嫌ったのももっともでしょう.戦後の『それいゆ』や『ひまわり』になると,伏し目がちの顔もあるものの,健康的な女性や少女がおおく見られるようです.が,「絵」とか「ファッション」というジャンルの作品を発表する,というばかりではなく,生活全般をトータルなものとしてとらえ,そこに<美>とか<優しさ>とか<工夫>といったものを盛りこんで,読者たちとともに生きようとする姿勢,それこそが中原淳一の魅力であるといえるのではないでしょうか.スタイルブックもあればインテリアデザインの提案もあり,小説や童話の挿絵を描き,雑誌の付録としてのいろいろな小物をつくるなど,エネルギッシュな活動に,あらためて感心しました.≪没後20年≫ の出品数にはおよばないようですが,今回も約400点が展示されており(初公開の原画もあるとか),十分に堪能することができます.