なんとも重苦しい・・・

国立ハンセン病資料館で ≪一遍聖絵極楽寺絵図にみるハンセン病患者 〜中世前期の患者への眼差しと処遇〜≫ を見てきました.所沢街道沿いにある多磨全生園がハンセン病患者の療養施設だということは知っていましたけど,そこに隣接してこういう資料館があったのは,今回はじめて知りました.犬丸 治氏がTwitterで紹介(5月22日条)されていたのでいってみたのですが,なんといえばいいんでしょうか,へたな論評や感想を拒絶するような峻厳な空間とでもいうほかない存在を実感させられました.もっとも,一遍上人の絵巻は,おもしろいなどといったら不謹慎といわれそうですけど,見るものの興味をさそう内容に満ちています.十二巻にわたって上人の一代記を描いていますが,メインの部分よりも,背後に描きこまれた群衆の描写に当時のありさまを見ることができます.街路や寺院の軒下にたむろする乞食や,ハンセン病患者をあらわす(らしい)覆面をしたひとなど,社会の底層にあるひとびとをも描きこんでおいた絵師の意図がじっさいはどういうものであったかはわかりませんけど,この絵巻が,現在これを見るわたくしたちにいわくいいがたい感動をあたえてくれるのは事実です.一遍とほぼ同時代に生きた忍性がかかわった鎌倉の極楽寺の絵図と,そこから出土した土器なども展示されていました.極楽寺といえば,歌舞伎の「白浪五人男」で日本駄右衛門がたてこもる山門をおもいうかべますが,ハンセン病患者の収容施設が(中世に)つくられていたというのは,これも今回はじめて知ったことです.まったくじぶんの無知がはずかしくなります.常設展示もひととおり見ましたけど,見るのがつらくなるほどの重苦しさを感じさせられました.3つの部屋にわかれていて,日本のハンセン病をめぐる歴史を示すところ(展示室1)と,近・現代の療養所の実態を再現した部屋(展示室2)と,さらに,「苛酷な状況にあってなお、生きる意味を求め、また生き抜いてきた患者・回復者の姿を展示して」いる「展示室3」とからなっています.患者たちが慰安として歌舞伎を演じている写真には,なんだかほっとしました.常設展示のなかでもっとも印象にのこったのは,「舌読」と題するモノクロの写真です.いつ撮影されたものかわかりませんけど,感動的というか,衝撃的というか,視力と指先の感覚を失った患者がじぶんの舌で点字本を「読んで」いる光景です.資料館のパンフに「当館の展示は、一度ですべてを見終わることはむずかしいかもしれません。何度もくりかえし、心にとまったところを中心にご覧いただければと思います」とあるように,またあらためて来たい,と,おもっています.