「楽器」が主役

学習院大学でおこなわれた「第七〇回 学習院大学史料館講座「音を創る・音をつなぐ」」にいってきました.2部構成になっており,「第I部:講演」は松下敏幸氏による「クレモナにおける歴史的名器の制作伝統と日本人初の弦楽器制作者鈴木政吉について」というおはなしで,「第II部」は松下氏が造られた楽器類をもちいての演奏です.松下氏は「1957年生まれ。1979年より弦楽器修理・制作を志し、1982年イタリア,クレモナに渡る。[・・・]1998年よりイタリア国立クレモナ弦楽器制作学校マスター・コース最終学年に日本人初のマエストロとして教鞭を執」っておられるそうで,わたくしの無知をさらけだすようで恥ずかしいんですけど,こういうひとがいたということは,今回はじめて知りました.<クレモナ>という地名も,ヴァイオリンにかかわる土地として(いわば条件反射のように)出てはくるんですが,その実情はまるで知りませんでした.松下氏はクレモナの歴史や風土からはじめて,その地でヴァイオリン制作がおこなわれた経緯などを説明されましたけど,冬には湿度が90%以上にもなる,という土地だそうで,おどろかされます.ヴァイオリンをつくるために樹齢100年以上のもみのきを伐採するものの,そのうち楽器として使用できるのはごくわずか(数パーセント)で,しかもさらに20数年を,乾燥させるために寝かしておくのだとか.気の遠くなるほどの時間が必要なんですね.そうして得られた木材をヴァイオリンなどに仕立てていくさい,寸法のうえで5:7という比率が重要だ,との解説がありました.和歌や俳句でも五七五というリズムがあるではないか,と,松下氏はいっておられましたけど,はたしてこれが洋の東西にわたっての普遍的なものなのかどうか,疑問ものこりますが,興味深い説ではあるでしょう.ほかにもおもしろいはなしがいろいろとあって,楽しく拝聴しました.時間の都合で,話したりないところもあったとのこと.なんとか,別の機会をつくって,「楽器」についてあらためて語ってほしいですね.