550億円(!)

学習院大学史料館講座「神話学からみた遷宮」を拝聴してきました.講師は平藤喜久子國學院大學准教授です.はじめに伊勢神宮および遷宮ということについての解説があり,後半では「神話学から遷宮を考える」として,世界の神話(ことに人類の誕生と起源にかんするもの)をとりあげ,日本の神話(記紀)の特色を指摘したうえで,遷宮との関連を論じられました.人間は土からつくられた,とする神話があるいっぽう,植物のような性質(死すべき存在)が人間にあたえられた,という神話もひろく分布しており,しかし,日本の神話はそうした植物的な性質をはかないものとしてとらえるのではなく,死があらたなよみがえりにむすびつき,世代交代をくりかえしつつ,継続していくのだそうです.遷宮にも,おなじような意味がみとめられる,というのが平藤先生のお考えのようです.こんな貧弱な要約ではまるで意味不明で,マチガイもあろうかとおもいますが,わたくしの理解したところだけをとりあえず記しておきます.じっさいの講座は諸資料や写真をたくさん使った,楽しいものでした.(大昔の映画「日本誕生」の写真なんかもありました).それにしてもおどろかされるのが遷宮の実態です.八年の歳月をかけ,1万4千本の用材と2万5千束の萱を1万2千人の宮大工が参加して造営し,装束などもすべて新調し,その経費は550億円にのぼるとのこと.これほどの規模のことをつづけている日本とは,すごいというか,えらいというか,ばからしいというか,どう評価すればいいのでしょうか,ことばに窮します.