これはオススメです (美術)

Bunkamura ザ・ミュージアムで ≪シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界≫ を見ました.本展は「シャヴァンヌの全体像を日本で初めて提示する機会」だそうです.1999年 6月に神奈川県立近代美術館の ≪水の物語≫ で島根県立美術館所蔵の「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」を見て以来,シャヴァンヌのことはなんとなく気になっていたのですが,今回,この画家のさまざま作品に接することができました.壁画の創作が多かったせいでしょうか,通常の「画家」というあつかいからはずれる面があるようですが,しかし,その作品には独自の個性と魅力がこめられており,見るものの感動をさそいます.初期の作にはふつうの油彩画のような色使いやタッチも見られますけど,このひとの本領は,やはり,淡い色彩と静謐な雰囲気,そして象徴主義的な描写にあるというべきでしょう.サブタイトルに「アルカディア」という語がいれられているとおり,この世ならぬ世界をつくりだしています.作中の人物も,抽象観念の擬人化であったり,そのしぐさにも,わるくいうなら芝居がかっているところがありますけど,謎めいたおもむきがあって,興味をかきたてられます.この展示,図録の解説をくわしく読んだうえで,またあらためて見にいきたいものです.