食の話題はおもしろい (その他)

石神井公園ふるさと文化館で原田信男氏の講演「江戸の食文化 周辺農村との関連を含めて」を聴きました.きょうからはじまった「特別展 江戸の食文化」の関連講座です.食への関心には高いものがあるのか,満員の盛況でした.もっとも,日本食とはいっても,それをどう定義づけるかはかなりやっかいな問題だそうです.食には伝統的な(変わらない)面と,諸外国の異質なものを取りいれるという面があって,たとえばカレーやとんかつやラーメンを和食といっていいのかどうか.あるいはすしとかてんぷらもむかしのものと現代のものとではそうとうにちがうとか,いろいろと問題がおおく,またそれゆえに興味をひかされる点が多々あるのかもしれません.原田氏のはなしは文化史的なスケールが大きく,日本食は基本的に中国からの移入(影響)のもとにありながらも,とりいれた部分ととりいれなかった部分があるとか,小麦と米の文化のちがいとか,おもしろい話題がいっぱいでしたが,とくに江戸時代になってからの食文化の発展を積極的に語られたように感じました.庶民が気軽に飲食できるようになったこと,芝居や遊郭や行楽(社寺詣)で料理をたのしんだこと,大食い大会などあそびとしての飲食がはやったことなどを図像資料を用いて,わかりやすく解説されました.江戸の三大改革や飢饉についてのはなしもあり,「飢饉」とは食物の不作というよりも人為的なものだという説には,ちょっとおどろかされました.会場からも熱心な質問が寄せられ,やはり食への関心が高いことをうかがわせます.
講演終了後,特別展をのぞいてきました.浮世絵や書物,番付などの資料のほか,看板や,むかしの屋台や料理を再現したものとか,バラエティーに富んだ展示になっています.握りずしが現代の約2倍の大きさだというのにも,おどろかされます.練馬大根にかんするコーナーを設け,図録にも「江戸の食を支えた練馬大根」という一章を載せているのが,さすが練馬区の施設ゆえのご愛嬌というか,特色というべきでしょうか.