過去を見直す姿勢

杉並区立郷土博物館 分館で ≪過去の記憶のよみとき方 −「個」の先にあるもの−≫ を見ました.昨年春につづいて,矢嶋又次氏の「記憶画」(30点)と,現代のおなじ場所の写真などを展示しています.「「記憶画」をよみときながら街の歴史を紹介します。[中略]普段、見慣れて気にも留められないような”モノ”であっても、あらためて見直すことで、多くの人々と分かち合える情報の宝庫へと変化していくことを知っていただければ幸いです」とチラシにあるように,絵から読みとれるものをさぐり,時代の変化と歴史とを追っていく,という姿勢がうかがえます.そういえば,わたくしたちの身近でも,ここは前はなんだったんだろう,とおもえるものがけっこうありますね.あたらしく建った住宅とか,コンビニとか,ファミレスのチェーン店とか,あらたに出現したものに圧倒されて,すこし前のことはまるで忘れてしまっています.時代の流れが早い,といってしまえばそれまでですけど,過去のことどもを記録し,記憶のうちにとどめておくことも,やはり必要といえるでしょう.そうでないと,「進歩」という,すばらしいことのようにおもえる形態に巻きこまれて,無駄な消費をしつづけるだけの生活を送ることになってしまいかねないからです.現に,今のわたくしたちはそうした生活を強いられているのではないでしょうか.この企画展に展示されている矢嶋又次氏の「記憶画」を見ると,昔と今とのちがいにおどろかされます.というより,昔のことを忘れてしまっているわたくしたちの現実に,おどろかされます.そのいい例が「荻窪方面の雨乞」です.雨乞いなんて,大昔のこととおもっていたら,大正時代(関東大震災以前)にもおこなわれていたんですね.ほかにも,昔と今のちがいを示す絵がいろいろとあります.過去のこと,郷土のことに興味のある方々へおすすめの企画展といえます.