文楽と歌舞伎の写真展

神田駿河台の ESPACE BIBLIO というところで「渡邉 肇 写真展 人間浄瑠璃 第一回 文楽至宝尽の段」を見てきました.渡邉氏は1964年生まれの写真家で,ここ5年間に5万枚あまりの文楽にかんする写真を撮影されたそうで,そのうち30点ほどの作品を展示しています.ふつうならば(一般の見物が)見ることのできぬ角度からの舞台の光景や,楽屋や稽古場での技芸員の方々の姿など,興味深い写真ばかりです.会場内には浄瑠璃の演奏の音声が流れ,住大夫師の「スライドショー」も写し出されていますが,ほかに,紅白幕の振り落としを撮影した9枚の写真(ここだけはカラー)があります.「千本桜・道行」で,舞台下手から,モータードライブで撮影したのでしょうか,黒衣のひとたちが落ちてきた幕を体で受けとめて,舞台のそでに運んでいくまでを写しています.興行をおこなうにあたって,舞台の背後に,これほどの用意(というか,作業というか)がなされていることに,あらためて感動しました.
そのあと,神保町まで歩いて,地下鉄で半蔵門にいき,JCIIフォトサロンで「薄井大還作品展 素王の人 十二代目市川團十郎 −時空の愛、芸の伝承−」を見ました.こちらは,30年あまりにわたって團十郎丈を追ったもので,正統的な舞台写真もあれば,楽屋裏などのプライベートな写真もあります.歌舞伎十八番の荒事を写したものに,迫力がありますね.いっぽう,楽屋でくつろぐ姿には,やさしさがあるようです.ともあれ,このひとがまだまだこれからという時点で逝ってしまったのが,なんとも残念です.