たいそうわかりやすい

芸術新潮 10月号』の特集「ギリシャ神話 エロティック・ガイド」を読みおえました.刊行直後に買ったものの,図版だけをざっと眺めただけでそのままになっていたのを,ツンドク本がたまる一方なのはまずいとおもい,文章による解説部分にも冒頭からいどんでみました.東ゆみこ氏が「Q&A」という体裁で,ギリシャ神話の成り立ちや内容,特色などをわかりやすく語っておられます.池上英洋氏は西洋美術に描かれたギリシャ神話のあれこれを,時代順,テーマ別に解説し,要領のよい美術史となっています.「19世紀に入ると[中略]神話主題はキリスト教主題とともに西洋美術から消えていく。[中略]神々はもはや私たちのまわりから去ってしまったのだ(p. 66)」と書かれていますけど,現代の作家のなかに,ギリシャ神話に取材した(というか,あらたなとりいれ方をしている)作があるのを,おもしろく見ました.レオ・カイヤールによる「ドレスダウンした神々(pp. 74-75)」は傑作です.が,それ以上におもしろいのが東ゆみこ氏と大塚ひかり氏の対談です.「チン切り、クソマル、醜パワー」と題して,ギリシャ神話と日本神話とのちがいと同質性,現代のわたくしたちの意識と神話とのかかわりかたなどを論じて,読み応え十分です.