化け物がいっぱい

江戸東京博物館の企画展 ≪大妖怪展≫ を再度見てきました.今回の見ものは何といっても大徳寺真珠庵本の「百鬼夜行絵巻」です.妖怪たちの躍動感というか,じっさいに生きて動いているような感覚がつたわってきます.のちの「百鬼夜行絵巻」類には,化け物たちをカタログ化してしまっているように見えるものがあるんですね.もちろん,趣向をこらしたおもしろいものもあるんですが・・・.ほかには,耳鳥斎の「別世界巻」がよかったです.ごく一部だけの展示ですけど,人間が地獄で煙管にされているところなど,ずいぶん残酷でありながら,同時にユーモアもあります.他の浮世絵や幽霊図や絵巻や冊子など,前回同様,どれも興味深く見ました.なお,常設展示室では ≪伊藤晴雨幽霊画展≫ というのをやっており,全生庵蔵の幽霊画19点を展示していて,見応えがあります.が,それよりも驚いたのは晴雨の『いろは引 江戸と東京風俗野史』という著書です.全6冊.江戸東京のヒトとモノとを分野別に描き,解説も付していて,現代でも芝居関係者(大道具や小道具など)の参考文献として役だっているとか.「責め絵」を描くひととしかおもっていなかったので,考証家としての晴雨の関心の深さと力量とを知って,認識をあらたにさせられた次第です.