元号はどうするのか

天皇生前退位がおこなわれた場合,称号をどうするかという点についての議論が盛りあがっているようです.しかし,わたくしにはなんとも些末で本質に触れていない空虚なやりとりとしかおもえません.いったい,「生前退位」がなぜ問題となるのかといえば,生物として(といういいかたが「不敬」であるならば「生命体」といい換えますが)の天皇と社会的な存在としての天皇の時間的な期間の最終時がこれまでは一致していたのに,生前退位がおこなわれた場合にはそれが一致しなくなるからです.それをどのように処理すべきかということこそが,問題なのです.ここで,わたくしの提案を書きます.

1.生前退位がおこなわれた場合,退位後の名称を「平成天皇」とする.2.元号は「平成」をそのまま続けて用いることとし,新たな元号の制定はおこなわない.

より具体的にいうなら.たとえば2020年(東京オリンピックパラリンピックの年)に現在の天皇生前退位されたとします.そうしたら,現天皇は「平成天皇」を名乗り,世間でもそのように呼ぶこととします.いっぽう,新天皇(現在の皇太子)は「天皇」または「今上天皇」と称されます.天皇がふたり存在してしまうではないか,との批判があるかもしれませんけど,心配はありません.いっぽうは生命体としての存在を示す称号であり,もういっぽうは社会的な存在としての天皇(国会開催時の臨席など,国事行為をおこなう天皇)を指し示す称号であって,そのちがいは明白であり,混乱することはありえないからです.ところで,元号は「平成」をそのまま続けます.あらたな元号を制定するなどということは,生前退位した前天皇を死んだも同然とする,それこそ不敬な行為だからです.さて,202X年(平成(32+X)年)に平成天皇が死去されたとします.そのとき,はじめて「平成」に続くあらたな元号を制定すればいいのです.このX年間は,生前退位された前天皇が存命でいた期間として(後世のひとびとにとってもわかりやすい処置として)理解されることでしょう.「上皇」などといった称号を持ちだして複雑な論議を引き起こすよりも,はるかに明快で本質を突いた提案だと,自負しています.