作家の好み

石神井公園ふるさと文化館で ≪映画に魅せられた文豪・文士たち 知られざる珠玉のシネマガイド≫ を見ました.チラシに.

映画に魅せられ、そこに浪漫や未知の可能性を感じた谷崎潤一郎川端康成林芙美子江戸川乱歩三島由紀夫といった作家たちが、映画雑誌はもとより、新聞や「小説新潮」「群像」「文藝」などの文芸雑誌、また「藝術新潮」「アサヒグラフ」など多岐にわたる媒体にこぞって映画評、映画論を寄稿し、また熱く映画を語り合った時代がありました。/作家としての感性、尺度、表現で記された文章は一般的な映画批評家とは異なり独特の魅力に溢れ、それ自体がひとつの作品(読物)としての力を秘めています。/本展では、昭和初期から昭和30年代を中心に新聞や雑誌などに寄せられた「文豪・文士たち」による映画評、憧れの女優について書かれた記述など膨大な原稿の中から約100本を厳選し、寄稿された雑誌、公開当時の映画ポスター、プログラムなどと共に紹介するものです。

とあります.この案内文章のとおり,ずいぶんいろいろなひとたちが映画を論じているんですね.なかで,三島由紀夫のコメントがいちばん多いようです.有名な映画もあれば,わたくしなんがが(タイトルも)知らない作品もあり,このひとがこんな映画を見ていたの,とか,こんな見方があったの,とおどろかされることが多々ある企画展でした.ところで,余計なおせっかいといわれるかもしれませんけど,武田泰淳の文章がまったく取りあげられていないのはどうしてなのか,と,疑問を感じてしまいました.泰淳の映画評こそは「作家としての感性、尺度、表現」を縦横に発揮したユニークなものだとおもうんですが・・・.
さて,ふるさと文化館の分室にもいって, ≪生きて、食べて、書いた。−作家と食≫ も見てきました.(こちらは入場無料です).「練馬区に住んだ6人の作家と「食」との関わりに焦点をあてた展覧会」とのことです.草野心平が営んでいた居酒屋を再現したコーナーがあったり,檀一雄の愛用の包丁(6本!)を展示したり,田中小実昌の著書をならべたりと,こちらもおもしろく見ました.もっとも,野坂昭如の『火垂るの墓』はなんとも残酷でやるせなくて,おもしろいなどといってはいられない作品なんですが,これも「食べる」ことに触れたものとして,あえてここに展示した主催者の判断を諒としたいと,おもいます.