美術ファンへおすすめ

高階秀爾『 ≪受胎告知≫ 絵画でみるマリア信仰』(PHP新書PHP研究所,二〇一八年十一月)を読みました.「キリスト教と西洋美術の関係」などという(序章の)章題はいかにもむずかしそうですけど,西洋の文化に「受胎告知」がふかく入り込んでいることを示し,以下,具体的な作品を鑑賞しつつ西洋美術とキリスト教および西洋文化の問題をあつかうと述べておられます.まずは「受胎告知」とはどういうことであるのかを書いていますが,聖書に詳しい記述があるわけではないらしいんですね.しかし,だからこそ,多くの画家たちの想像力を刺激して,さまざまな「受胎告知図」が描かれることになった,とされています.具体的にどんな場所で,大天使ガブリエルとマリアはどんな位置関係にあって告知がおこなわれたのか,ふたりはどんな姿勢をとっていたのか,など絵に描くうえではいろいろな問題が出てきます.それを多くの作品を提示しつつ,歴史的な順を追って解説されています.個々の作に見られる特色や画家の技法などを簡潔でわかりやすい文章で記しており,美術ファンの方々へのおすすめの一冊といえます.