ミュージアムをはしご


たばこと塩の博物館で《小林礫斎 手のひらの中の美 技を極めた 繊巧美術》を見ました.
おどろかされた,というほかありません.雛人形の道具類などの精巧なミニチュアはこれまでにも見たことがありますが,そうした,ミニチュアとしてふつう想像されるもの以外の,森羅万象なんでも極小のサイズにしてしまう発想と,それを実現させる技術がすばらしく,ことばではいいあらわせぬほどの感動(というか衝撃)を体験しました.和歌や経文や書画を書きつらねた「画帖」は,いったいどうやってこんなこまかい文字(や絵)が描けるんだと,疑問にすらおもいます.むかしのひとはこういったものをつくりだしていたんですね.なお,本展には「倉田家旧蔵江戸玩具コレクション」も出展されています.江戸時代のひとびとがこうした「玩具」をつくっていたことに,やはり驚嘆させられます.

たばこと塩.からちょっと足をのばし,渋谷区立松濤美術館の大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ》をのぞいてきました.「第一部 大正イマジュリィの一三人」では藤島武二など13名の画家を紹介しています.なかで,わたくしが魅かれたのは小林かいちと橘 小夢です.かいちは2004年12月に逓信総合博物館 ていぱーくで《美しき日本の絵はがき展》を見たさいに注目したのですが,今回の展示を見て,あらためて,すごいひとだとおもい知りました.ひとつの絵からいくつものヴァリエーションをつくりだして,いわば組曲のような構成にしているのが,みごとです.橘 小夢は今回はじめて知った画家です.ビアズリーの影響があるのでしょうか.官能的な(あぶない)作風です.「嫉妬」という作品では双六をしているふたりの女性の髪が空中に渦巻いていて,蛇になったりはしていないものの,そういう雰囲気です.このひとには,今後,注意したいものです.ほかに,オマケの感想をいうなら,高畠華宵の描く男性(少年)にはホモセクシュアルの匂いがあるのがいいですね(笑).
「第二部 さまざまな意匠」は作者別ではなく,多様な切り口から大正のイマジュリィの世界に迫っています.本の装丁や映画のポスターや流行歌や,デザイナー不詳の作も多く,あやしげな雑誌をとりあげているのも,いいです.