ネタバレ注意

清水玲子『秘密 9』(白泉社平成23年 3月)読了.
冒頭に浴室のシーンが出てきます.この映像はその後何度か挿入され,これは現実におこった事件を示しているのだとおもって見ていたのですけど,じつは,(ストーリー展開の時間軸からいえば),将来におこなわれる(であろう)事態のイメージだったんですね.映画ではよくある手法ですけど,マンガではめずらしいのではないでしょうか.
物語が一冊で完結せず,次の巻にまでひきつづくというのも,これまでの「秘密」シリーズにはなかったようです.過去のエピソード(「2001」や「2003」や「2007」など)が回想というか伏線というか,この「2010」に導入され,ひとびとの意識に組みこまれるあたりも,きわめてみごとです.「薪さんのいる世界はまだ/まだ狂ってないんですね?」という青木クンの叫び(p. 152)はなんとも痛切です.そして,そんな精神錯乱にもかかわらず,本巻ラストで,母親の打擲をあえて受けつつ,「どうかオレを捜査から外さないで下さい・・・」と訴える青木クンのすがたはきわめて感動的です.
このあと,どういう展開になるのでしょうか.次巻がたのしみです.