ふしぎな作風

坂田靖子『ベル デアボリカ 2』(朝日新聞出版,2011年 3月)を読みました.これってどういう物語だったっけ,と,昨年6月刊行の第1巻の内容をまったく忘れていて,どんな設定でどんな人物が出てくるのか,あやふやなままに読み進んでしまったのですけど,やはりわかりにくかったですね.というより,とらえどころがない,といったらいいでしょうか.文字量(せりふ)はかなり多いのに,そのことばを口にする人物の性格や思想や行動がどういうものであるのか,あいまいで頼りなげなのです.主役はたぶんツヴァスで,彼の意識に沿ってストーリーが展開しているとおもわれるのですが,魔法使いのヴァルカナルというのが,善なのか悪なのか,ツヴァスとのあいだにホモセクシュアルめいた気配も感じられて,謎めいた雰囲気を醸しだしています.この先どうなるのでしょうか.なお,背景を省略したゆるい絵と,入念な描写とが混在しているのも,この作品の特色ではないかと,おもいます.