細部への執着

吾妻ひでお『地を這う魚 ひでおの青春日記』(角川文庫,角川書店角川グループパブリッシング,平成二十三年五月)を読みました.作者以外の人物(男性)は動物のすがたであらわされ,ヘンな生き物やロボットがやたらと出てきます.吾妻氏の特質として<シュール>があげられることをおもえば,こうした発想も当然だともいえますけど,それよりもおどろかされたのは<細部>への執着です.部屋や街中が,背景までびっしりと書きこまれています.これほどの<絵>は,現代のマンガでは稀なのではないでしょうか.吾妻氏の<絵>の様式について,どなたか論じてくれないものかと,夢想してしまいます.