けっこう多面的な入門書

サライ 7月号』(小学館,2011年 6月)を買い,「特集 美術の見方」だけを読みました(なお,表紙には「美術の見方」とありますけど,目次では「これから美術の話をしよう」となっています).四つのセクションにわかれ,辻 惟雄氏による「12作でわかる 日本美術の歴史」,中野京子氏の「日本の美術館で 怖い絵を観る」,宮下規久朗氏たちがフェルメール印象派などについて語る「謎解き 西洋美術」,そして安藤忠雄氏の案内で現代日本のいくつかの美術館を紹介する「頭と体に効く 緑溢れる美術館」という構成になっています.美術にかんする,多面的な入門書といっていいかと,おもいます.
冒頭の,辻氏があげられている12作品にはまったくおどろかされました.むろんこれだけで日本美術を説明できるわけではありませんけど,仏画水墨画琳派や浮世絵など,日本美術のさまざまなジャンルを要領よくとりあげ,その特徴と性質とを簡潔に記しているあたりは,まさに名人芸であるといえるでしょう.
中野氏はムンクやフュースリーなど4作にふれておられますが,とくに,岸田劉生の「麗子像」を「怖い絵」と感じる,その感じ方についての解説(というか,分析)を,なるほどと感心して拝読しました.