奇妙な作風

川原由美子『ななめの音楽 II』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス,朝日新聞社朝日新聞出版,2011年 8月)読了.ファンタジーかとおもうと,第二次世界大戦中の戦闘や爆撃などの映像も出てきます.過去のいまわしい記憶がゲームとして再現されるらしいのですけど,それがはたして現実なのか,シミュレーションなのか,よくわかりません.基盤となる世界そのものがどこにあるのか,それすら不明なままです.こうした作品によくある,<愛が地球を救う>といったメッセージとも無縁です.そもそも,この作品の梗概を,わたくしは作ることができません.まったくお手上げです.わるくいえば,これは失敗作でしょう.が,そういっただけでは済まされぬ面があるようにも,おもえます.著者からの問題提起があまりに多すぎるのかもしれません.プロのマンガ評論家の方々にとっても,この作を論じるのは,かなりむずかしいのではないでしょうか.