擬人化が生みだす感動

遠藤淑子『スマリの森』(白泉社文庫,白泉社,二〇一一年九月)を読みました.動物を擬人化して描くときには,服を着せて二本足で直立させた姿にするのがふつうですけど,この本では主人公であるスマリとその家族たちをまったくの人間として描きだしています.いっぽう,動物のすがたであらわされるキャラクター(丹頂鶴やミンク)もいるので,遠藤氏の「擬人化」がどのような意図によるのか,じつは,よくわかりません.が,ここに登場するひとびと(?)の感情が,きわめて切実であり,読むものに(むしろ)息苦しいほどのおもいをいだかせることは,断言できます.もっとも,コミカルなところもあり,「スマリたち その1」に出てくる「しっぽがしま模様だった」「たぬき」が,ラスカルと名乗って,「本当は・・・/別に名前があるはずなんだ/人間がおれ達を見るたびラスカルって言うんで通り名になって・・・/そのうち皆本当の名前が思い出せなくなったんだ」(p.157)というところでは,笑ってしまいました.