浮世絵の影響

ニューオータニ美術館で《北斎とリヴィエール 三十六景の競演》を見ました.アンリ・リヴィエールというひとはまったく知らなかったんですが(*),フランス19世紀末の,モンマルトルのカフェを中心とする文化圏のなかにあって,影絵芝居にたずさわっていたようです.それが,日本の浮世絵にふれて木版画をこころざし,さらに多色リトグラフによる「エッフェル塔三十六景」という連作を完成させた,というんですね.今回展示されているのが,すなわちその36点です,北斎の「冨岳三十六景」に触発され,エッフェル塔をさまざまな地点や角度から描きだしています.塔そのものにせまった作もあれば,遠景にあしらっただけのもの,塔の内側からながめた光景など,いろいろです.浮世絵から影響を受けたというか,あるいはその技法を研究して取りいれたというか,とにかく,こういうものがあったのかと,驚ろかされました.
エッフェル塔三十六景」につづいて,「冨岳三十六景」も展示されています.こちらは原安三郎コレクションの収蔵品とのこと.刷色があざやかです.ほかに広重の作などもすこしあります.この,ちょっと変わった観点からの企画展はオススメです.
(*)念のため,鹿島 茂『モンマルトル風俗事典』(白水社,二〇〇九年三月)の索引にあたったところ,リヴィエールの名が数箇所にあげられていました.ただし,影絵劇場にかんする記述だけで,版画作品にはふれていません.