宣伝文句に惹かされて

青池保子『Z −ツェット− 完全版』(秋田書店平成23年10月)読了.「Z」は花とゆめCOMICS版(全2巻)と白泉社文庫版を持っているのですが,「完全版」というキャッチコピーがあったので,つい買ってしまいました.「VI」ははじめて読む作品ですし,イラストや予告カットや「青池保子インタビュー」もあって,「完全版」の名に恥じぬ充実した書物になっています.カラーページが多いのがいいですね.ストーリーについていまさらわたくしがウンヌンするまでもないでしょう.30年まえの,ドイツが東西にわかれていた時代のスバイアクションですので,内容的には古いのですけど,今なおリアリティーがあって,たっぷりと読ませます.なかでも,ひとびとのせつない心情を描き出しているところがいいです.白泉社文庫版の解説で藤本由香里氏が「シリーズ中唯一のベッドシーン」である「IV」でのZのせりふ(「許して下さい少佐・・・/ぼくは本当に寒かったんです/やり切れないほど寒かったんです―」)を引用されていますが,まさにここに,せつない心情がきわまっている,といっていいでしょう.