ツッコミがおもしろい

今日の朝日新聞読書欄の「著者に会いたい」で紹介されていた『日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、 人物で読む古典』(蛇蔵&海野凪子,幻冬舎,二〇一一年八月)を,さっそく本屋で買って,読みました.日本の古典文学への案内かというと,そうでもあり,同時に単なる啓蒙的なガイドではない,というちょっと不思議な書物です(と,おもいます).古典作品を部分的にマンガ化したところもありますけど,サブタイトルのとおり,作者や登場人物への興味が全編をつらぬいており,たとえば清少納言とはいったいどんなひとだったんだろう,といった観点から,その人生(の一部)を描き出しています.他のひとたちも同様.生涯のすべてではなく,特定の部分を強調しているのがおもしろいですね.それと,描かれているひとびとや,描いている作者みずからへのツッコミが多く見られるのも,おもしろいです.各章のおわりに「海野凪子の古典余話」というコメントがあり,「ただいま制作中」という四コママンガは本編とはとくに関係のない楽屋落ち的なギャグになっています.こうした多面的な構成が本書の特色といっていいかもしれません.「ただいま制作中」のなかでは,「「まさか〜ろう」を使って短文を作りなさい」という問題にたいする答え(「まさかりかついだきんたろう」)について,「インターネット上で広く知られている誤解答の名作です」としたうえで,「あ、 それうちの学生の答えだ」といったアメリカの某大学教授のことを書かれています(p. 70).これには笑ってしまいました.