歌舞伎学会2日目

きのうにひきつづき,東京学芸大学でおこなわれた歌舞伎学会の秋季大会に参加してきました.午前中に3本の発表,午後は「近世文学・文化の広がりと歌舞伎」というはば広い観点からの講演とシンポジウムがおこなわれました.
日清戦争に取材した「会津産明治組重」についての日置貴之氏の考察,坂東彦十郎の活動を追った佐藤かつら氏の研究,黄表紙にあらわれた忠臣蔵のあれこれをさぐる齊藤千恵氏の発表など,どれもおもしろく聞いたのですが,こまかい考証に入り込んでしまっている,という印象も受けてしまいました(ただし,各氏の研究そのものの価値を否定するつもりはまったくありません).午後のシンポジウムにおいて江戸の文芸全般というひろいパースペクティブが示唆されたために,それとの対比が目だってしまったからです.もっとも,これはたいそうむずかしい問題で,特定の専門分野を研究することとひろい視野をもつこととの背反は研究者へのおもい課題であるというべきなのかもしれません.午後の講演で高橋則子氏が,『見立三十六歌撰』を読み解くためには和歌にかんする知識や歌人たちの伝承,それと歌舞伎(役者や興行の実態)についての研究の双方が必要だと話されたのが,印象にのこりました.