フェルメールの本質にせまる

藤田令伊フェルメール 静けさの謎を解く』(集英社新書〇六二一F,集英社,二〇一一年一二月)を読みました.本質などということばはあまり使いたくないのですが,本書にかぎっては,あえて用いてもいい,とかんがえます.フェルメールの作品を見たときにわたくしたちが感じる印象はいったいどういうものであるのか,なぜそうした感情が引きおこされるのか,フェルメールの作品にはどういった技法がほどこされているのか,画家はなにを意図していたのか,といった問題に,じつにたんねんに,さまざまな角度から取りくんでおられます.フェルメールの絵の特色とされる青色や構図や,作品中に描かれているモノや,作品空間の光源や雰囲気など,目の付けどころもユニークで,それらについての考察も説得力に富んでいます.新書版で200ページほどの,けっして大著とはいえない体裁ですけど,内容はきわめて濃く,美術に関心をもつ方々へのオススメの一冊といえます.