破壊的なパワーがすばらしい

吾妻ひでお山本直樹・監修)『21世紀のための吾妻ひでお』(河出書房新社,2012年 1月)を読みました.「やけくそ天使」など7種の作品から26点をえらんで掲載しています.エロチックなもの,シュールなもの,わけがわからないものなど,さまざまですが,どれもおもしろいです.―ということが,じつは奇跡的といえるのではないでしょうか.何年かまえにも書いたことがありますけど,マンガの文法を徹底的に破壊して,しかもその破壊じたいが(おもしろい)作品として成立しているのが,吾妻氏のすぐれたところだとおもうのです.でまかせで作っているようでいて,その根底には計算された意識があるにちがいありません.巻末に「全作品解説」を寄せている山本氏がいくつかの元ネタや引用を指摘されていますが,さりげなく置かれている文字やカットにも作家の強靭な創作意欲を見ることができるかと,おもわれます.