類型的なところがおもしろい

天理ギャラリーで ≪吉祥づくし明治の引札 商家の広告印刷物にみる福徳円満のかたち≫ を見ました.「引札」とは,現代でいうなら商店のチラシやポスターにあたるものなんですが,それだけでなく,本企画展のタイトルやサブタイトルに窺われるように吉祥をことほぐ意味があり,また,ものによっては暦(カレンダー)としての実用的な要素もあったらしいのです.そんな引札を100点ほど展示しています.松竹梅とか鶴亀とか一富士二鷹三茄とかをあしらったもの,恵比須・大黒や七福神を描いたもの,歴史上の人物や逸話を取りいれたもの,さらには当世の美人画や文明開化期の風俗(蒸気機関車や電話など)を登場させたものなど,じつにいろいろです.美術(芸術)作品として見るならぱ,すぐれているなどという評価はあたえられないでしょうけど,そういう評価基準とはべつの見方をもってするなら,ここには当時のひとびとの感性,すなわち類型的なイメージの提示と受容とが幸福に成立していた,といえるのではないでしょうか.