多才・多彩な意欲におどろく

エンパクで ≪六世中村歌右衛門わたしの好きな歌右衛門≫ を見ました.昨年は「私の愛したお役」というサブタイトルでしたけど,「本年は、「わたしの好きな歌右衛門」と題し、ファンの視点から歌右衛門丈の軌跡をたどります」とチラシにあるとおり,「すべてにおいて豪華な顔ぶれ」の交友関係を展示しています.三島由紀夫志賀直哉谷崎潤一郎などの書簡は,まさに「ファンの視点」であるといっていいでしょう.歌舞伎座の一等料金が1,200円だったときに,三島が編んだ本は15,000円の豪華本だったそうです.今なら20万円以上でしょうか.これだけでも,当時の熱狂的な「ファン」のおもいが伝わってくるというものです.が,わたくしが興味深く見たのはエンパクが所蔵するブロマイドです.200枚ちかくもあったでしょうか.室内のモニターで流していたスライドショーでは演目や役名や上演年月もキャプションとして示しており,それによると昭和30年代のものが多かったようです.おそらく,歌右衛門の最盛期だったとおもわれます.時代ものに世話もの,舞踊,新作歌舞伎や復活狂言など,さまざまな役に積極的にいどんでいたことに,あらためて驚ろかされました.これほどの熱意(というか執念というか)を同時代的に味わうことができなかったのが残念です(わたくしが歌舞伎を見るようになったのは昭和40年代末以降ですので).