興味本位の俗っぽい出版物という気もしますが・・・

池上英洋(監修)『別冊宝島1872号 残酷絵で見る 暗黒の西洋史』(宝島社,2012年 6月)を読みました.<第1章 殺害と死/第2章 拷問と処刑/第3章 殉教者たち/第4章 狙われる女性の性/第5章 日常に潜む残酷さ>にわけ,さらにこまかい項目(たとえば「第1章」では「カインとアベル」「サムソンとデリラ」「ユディト」など)ごとにさまざまな西洋絵画を引きつつ,解説しています.どれも怖くて,おぞましいですね.もっとも,うつくしいといってもいいような絵(ギュスターヴ・モロー「竪琴でオルフェウスの首を運ぶトラキアの少女」)や,わすれがたい印象をのこす作品(ヘンリー・ウォリス「チャタートンの死」やポール・ドラロッシュ「ジェーン・グレイの処刑」など)もありますけど,それにしても,こういった絵を美術作品として創り,鑑賞してきた人々の意識とはいったいどういうものだったのかと,疑問におもう,というか,あきれてしまいます.(こうした本を買って読んでいるわたくしじしん,興味本位で俗な人間なんですが).本書で知ったこと()のうち,なるほどとおもったところを引用しておきます.

絞首刑は窒息して死ぬのではない。落下の衝撃によって、首の頸椎が外れるなり圧迫されるなどして脳への血流が止まり、死に至るのだ。そのため、縄の結び目を片側の耳のあたりにしておくと、衝撃が首の片側にかかり、頸椎が外れやすくなる。(p. 68)

磔刑や絞首刑も、刑のあとそのまま死体が放置される。同じように、「串刺し刑」もまた放置刑のひとつである。しかし、その方法は残虐極まりない。まず、先を尖らせた木や槍の上に受刑者を乗せ、肛門や膣に刺さるようにする。あとは自然と受刑者の身体が重みで下がっていき、最後には槍が身体を貫通するというものだ。(p. 74)

)念のため池上英洋『血みどろの西洋史 狂気の一〇〇〇年』(河出書房新社,2007年11月)を本棚から引っぱりだしてページを繰ったところ,絞首刑と串刺し刑についての説明がありました(pp. 38-41).まるで忘れていたんですね.老人力の増大に愕然とさせられました.